建設業M&A勉強会が映す、後継者不足と地域インフラの岐路

建設業M&A勉強会が映す、後継者不足と地域インフラの岐路

建設業M&A勉強会が映す、後継者不足と地域インフラの岐路のニュース解説イメージ

ニュースの概要

全国建設業支援協会は、建設業を対象にしたM&A勉強会を10月28日に東京・新宿で開催します。登壇するのは、株式会社シードアドバイザリー代表取締役社長の朝野一博氏です。後継者が見つからない建設会社が増えるなか、会社を畳むのではなく第三者に引き継ぐという選択肢を、実務の目線で学べる場として設けられました。会場参加に加え、後日アーカイブ動画も公開され、地方の経営者も視聴できます。協会は、事業承継の遅れが道路、橋、上下水道といった生活インフラの維持力を弱めかねないと見ており、その危機感が開催の背景にあります。

引用元: 後継者不足から日本のインフラを守る―全国建設業支援協会 建設業のM&A勉強会を10月28日に新宿で開催。株式会社シードアドバイザリー代表取締役社長・朝野一博氏が登壇。アーカイブ動画で全国の建設業へ発信(PR TIMES)

分析・見解

廃業の波は、工事の担い手が消える問題でもある

建設業の経営者の高齢化は、数字にはっきり出ています。就業者のうち55歳以上が約36%を占め、29歳以下は約12%にとどまります。経営者の年齢も同じ傾向です。

中小の建設会社は、社長個人の人脈と技能で仕事を回している例が多くあります。後継者がいなければ、会社の黒字・赤字に関係なく幕を下ろすしかありません。これを「黒字廃業」と呼びます。

問題は、その影響が会社の外へ広がる点です。地方では、除雪、災害時の応急復旧、橋の補修を、数社の地場業者が支えています。1社が消えると、自治体の入札に応札者がいなくなる事態が起こります。

勉強会が示す、事業承継の三つの出口

事業の引き継ぎ先には、大きく三つあります。親族、社内の従業員、そして第三者です。親族内承継は年々減り、従業員への承継は株を買う資金が壁になります。

残る第三者への承継、つまりM&A(=会社や事業の売買)は、かつて「身売り」と見られがちでした。しかし今は、後継者不足を解く現実的な手段として受け止められています。

今回の勉強会が全国向けにアーカイブ動画を出す点は見逃せません。建設業の経営者は現場に出ており、平日に会場へ来られる人は限られます。動画で学べれば、相談を先延ばしにしていた層まで届きます。

建設業のM&Aが他業種より難しい理由

建設業の売買には、飲食や小売にない固有の壁があります。まず、建設業許可と経営事項審査の点数です。これらは会社に付いた資格であり、買い手が自由に持ち込めるものではありません。

次に、技術者の存在です。主任技術者や監理技術者といった有資格者が辞めると、許可の要件を満たせなくなります。人が資産の大半という点で、設備中心の製造業とは性質が違います。

さらに、受注残と進行中の工事があります。未完成工事の責任をどちらが負うかを、契約で細かく決めなければなりません。仲介会社の腕が問われる場面です。

点検・補修分野の買い手が増える見通し

私が注目するのは、買い手側の変化です。高所や橋梁、プラントの点検補修は、ロープアクセスやドローンを組み合わせた専門技術が必要で、新規参入のハードルが高い分野です。

自前で人を育てるには数年かかります。技術者ごと会社を買うほうが早いと考える企業が増えるでしょう。実際、欧州の点検・保全業界では、中堅同士の統合が続き、技能者の資格管理まで含めて引き継ぐ例が一般的になっています。

日本でも老朽化したインフラの点検需要は今後20年ほど続きます。需要が確かな分野に、人材の供給が追いつかない。このずれが、M&Aを後押しする最大の力になるはずです。

ビジネスへの影響

売り手候補は、今期の決算書から整える

M&Aを考える経営者がまず着手すべきは、会社の中身を見える形にすることです。工事ごとの採算、保有資格者の一覧、取引先の構成を一枚にまとめてください。

社長個人への依存が強い会社は、評価が下がります。主要な顧客との関係を、社長だけでなく現場責任者にも分けておくと、買い手の安心材料になります。

相談は、体力のあるうちが得策です。赤字が続いてからでは交渉力が落ちます。売る気がなくても、自社の値段を知るだけで経営判断は変わります。

買い手候補は、人と許可を軸に対象を探す

買い手側は、単なる売上の上乗せではなく、欠けている能力を補う視点で探すのが有効です。たとえば、点検は強いが補修の施工班がない会社なら、補修に強い地場業者が候補になります。

買収後の定着が成否を分けます。技術者が辞めないよう、処遇や仕事の裁量を事前に話し合ってください。許可の承継手続きは、行政書士など専門家を早い段階で巻き込むと安全です。

勉強会の動画や相談窓口は、費用をかけずに相場観をつかむ入口として使えます。10月28日の開催を機に、社内で一度、承継の方針を話し合う場を設けてはいかがでしょうか。

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